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C.S.L.の取り組み

講演会・交流会

FORUM2009「学力の接続」第2回シンポジウム

多様性の尊重とアドミッションの変容

大学の入学者選抜には複数の役割が期待されている。第1は大学入学の際に適格者を選抜するゲートキーパーの役割である。入学者選抜には大学教育の水準を維持し、初中等教育を牽引する力がある。是非はともかく大学の入学者選抜は初中等教育の中身にまで遡及し、影響を与える。第2は大学の教育機会の均等化を促す効果である。入学者選抜の方針如何により、大学教育の機会は拡げられるだけでなく、入学者の多様化についても調整可能である。

そして、第3は大学進学市場を形成する役割である。社会が必要とする人材を育て、さまざまな分野に供給していくためには、大学に進学したいと思うものを多く集める必要がある。進学希望者が少なくなれば、わが国のように私学セクターへの依存が大きい社会では、それらの経営に直接の打撃を与え、存続さえも怪しくなる。

日本の大学進学率は50%を超えて頭打ちの状態にある。大学の収容力は過剰であり、進学率はすでに高すぎるという認識がある一方、これでは過少であるとの意見もある。観察される大学進学の希望は現実の進学率よりも高い。そして親の希望は本人の希望よりもさらに高いのである。しかし、潜在的な需要は実需に変わるのか。大学進学は今後どのように変わっていくのか、それが第2回シンポジウムのテーマである。その議論のために、3つの報告を準備した。最初の報告はUCバークレー大学のジョン・ダグラス氏である。気鋭の高等教育研究者であり、彼のいる講座はエリート・マス・ユニバーサルの大学のモデルを提唱し、わが国の高等教育研究に絶大な影響を与えたM.Trow教授がかつていたポストである。

アメリカは世界に先駆けて多様な学生たちを受け入れ、大学の大衆化を実現した国である。しかも、大衆化を進めながら、エリート研究大学の威信を損なうことはなかった。多様性と卓越性をともに発展させることは至難なことだといってもよい。現在のアメリカは急激な社会変化のなかでまた新たな多様性に直面していると推察されるが、新たな大学の多様化と卓越性の追及にどのように立ち向かっていくのか、大学入学者選抜はどのような課題を引き受けることになるのか、伺ってみたい。

台湾の国立中正大学の鄭勝耀(Sheng Yao Cheng)教授は、彼もカリフォルニア大学(UCLA)の出身者である。帰国後、台湾でめきめきと頭角をあらわし現在、高等教育だけでなく幅広く教育界で活躍している。彼にはアジアとアメリカを中心とする欧米を複眼的にみられる視点があり、それを支える情報ネットワークに恵まれている。それが比較教育研究の視野を広げ、柔軟な思考をひきだす背景ともなっている。台湾はごく最近、大学進学率100%達成を政策スローガンに掲げた。受験競争も厳しく、学歴主義の雰囲気を濃厚に残した社会のなかで、大学教育の拡大を進めることは並大抵ではない。さらなる大学進学の拡大を進める意図は何か。進学率の増加で生じる学生の多様化、大学教育の多様化をどのように吸収していくのか、そのゆくえを予測することはわが国の今後を見通すうえでもじつに興味深いことである。

アメリカも台湾も、日本とは人口規模も国情も異なるが、高大接続の次なる段階がどのようなものであるのか、そこにどのような課題が横たわっているかは、さまざまな共通項が存在しているように思われる。

開催概要
日程 2008年2月28日(土)
時間 13:30~17:30(13:00受付開始)
会場 東北大学 東京分室(サピアタワー10F/東京駅直結)
地図

東北大学 東京分室

※サピアタワー3Fにて受付をさせていただきます。
「入館カード」をお渡しいたしますので、入場ゲートにそのカードをかざして、ご入館ください。

スケジュール
13:00 開場
13:30 開催者挨拶
松浦三郎(C.S.L.学習支援開発センター所長)
13:45 基調報告 誰が大学へ進学するのか?―進学意志を規定するもの―
報告者:荒井克弘(東北大学教育学研究科・教授・工学博士)

1975~85年という停滞期を挟みながら、日本の大学進学率は、戦後ほぼ一貫して増加傾向を辿ってきた。第1の停滞期はベビーブームのあとの人口減少期に訪れたが、このときは政策的な誘導が強かった。2度目の停滞期はこれも少子化時期と連動しているが、進学率は一気に50%近くまで昇ったところで頭打ちの時期を迎えた。私立大学の定員割れはたびたび報道されているところであるが、現在の大学収容力が過剰であるか過小であるかは有識者の間でも意見は分かれる。誰が進学し、誰が進学しないのか。進学を阻んでいるのは経済的要因であるのか、非経済的な要因なのか。アメリカや台湾の進学事情を論じる前提として最近の日本の進学事情について報告する。

14:20 第1報告 オバマはアドミッションを変えるか-多様性を内包するアドミッションの可能性-
報告者:Dr.John A.Douglas ジョン・ダグラス(カリフォルニア大学バークレー校高等教育研究センター上級研究員)

アメリカは多民族国家として知られている。しかし、アメリカの大学入学における過程は、そうした多民族国家の持つ長所を果たして活かして来れたのだろうか。1774年にこの国が誕生して235年、ハーバード大学が創立されて373年、アメリカの大学はアメリカ社会の発展とともに変化し成長してきた。多民族国家を象徴する新たな大統領の誕生とともにアメリカの大学もまた新たな時代に向かってその顔を変えるのだろうか。アメリカ社会の多様性と大学アドミッションの現状の分析をこの問題に造詣の深いダグラス博士が論じる。

15:10 休憩
15:25 第2報告 台湾における大学進学率100%の意味と今後の展望
報告者:Dr.(Kent) Sheng Yao Cheng 鄭勝耀(台湾國立中正大學課程研究所/師資培育中心教授)

台湾は大学受験競争の激しい国の一つとして知られて久しい。台湾国立大学を頂点とするピラミッド構造はいまだ健在であるかに見える。この台湾で昨今大学進学率100%という状況が現実味を帯びている。また、大学評価においては唯一の評価機関であるHigher Education Evaluation and Accreditation Council of Taiwan (HEEACT, 財團法人高等教育評鑑中心基金會)によるプログラム評価によって毎年10%程度の学科が改廃を求められている。激しい競争の一方で確実に進行する大学教育の拡大と質的低下を経験している台湾の高大接続事情の分析をこの問題に造詣の深いCheng博士が論じる。

16:20 質疑応答
司会:田中義郎(桜美林大学総合研究機構長・教授)
17:15 総括
17:30 終了予定
お申し込み方法

お申し込みを締め切りました。

お問い合わせ

学習支援開発センター
TEL:045-473-2347
FAX:045-475-0540

参加費 1,000円(税込)/ 資料代として
定員 50名
主催 学習支援開発センター(C.S.L.)
共催 日能研/東北大学